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生きる

鳥取出身の召集兵が昭和50年に出した「フィリピン敗走記」という本を読んだ。祖父もフィリピンで戦死したから、どういう状態やったのか知りたかったんやが、予想外に衝撃的な内容で、なんとも表現し難い気分になった。

昭和20年、ルソン島北部の山中を、7名ほどの敗残兵が4月から敗戦後9月まで彷徨い続け、飢渇した彼らが食べたのは、ニナ、カニ、水牛、コウモリ、ヘビ、ヒル、牛革の靴、そして飢えやマラリアで死んだ戦友たちの人肉。

極限状態で本性をむき出しにしてる人が多いため、登場人物の名前や階級はいろいろと改変されてるんじゃないか、という気がした。実際のところは知らんが。

最終的には筆者1人だけが生き残り、つまり幾人分もの人肉によって生きながらえ、捕虜として米軍収容所で過ごし、昭和21年11月に復員したらしい。

まさに九死に一生を得て帰還したにもかかわらず、故郷の家は空襲で焼失し家族も全て亡くなっており、筆者は大山で開拓団員として農業を営むようになったとのこと。

あまりにも凄まじく、無常。



筆者は大正7年生まれで、平成11年に亡くなったとある。同じ鳥取の帰還兵、水木しげるは大正11年の生まれやから、ほぼ同年代やな。たぶん我が祖父も。

祖父の墓標には、確か「ルソン島サンタフェ地方にて昭和二十年五月戦死」とある。鉄砲に撃たれたか、爆撃でやられたか、餓死か病死か、全く知らん。誰かの血肉となって生還を助けることになったのか、それもわからん。



長いけど、主題と感じた部分を引用してみる。

 戦争は多くの人間と人間とが殺し合う。生きた人間同士が平気で殺し合う。殺し合っていながら、死んだ人間を食うのがなぜ悪いのだろう。この山の中で食うものがないのに、平和なときの慣習を守って、おめおめと死んでゆくのが、本当に、よいことであろうか。このようなときでも、人の肉は食わない、と言って死んでゆく人間を、戦場を知らない人は、いさぎよいとか立派だとか偉いとかいって拍手をおくってほめ讃えるであろうか。
 また、そのような行為をしている兵隊を、もう一人の兵隊が見たとき、悪い奴だ、といって、その兵隊を射殺して、自分は何も食わないで死んでゆく——。としたら、食わないで死んでゆく兵隊を、人々はほめるであろうか。おそらく、ほめるであろう。どのような権利によって、人を射殺するのか。やめるように注意するのならよかろう。生きようと努力している人間を自己の主観によって射殺してよいのだろうか。それこそ許しがたい殺人犯である。しかし平和なときの頭で考えるなら、おそらく誰もほめるであろう。生きている兵隊を射殺したことについては、なんの罪も問わないでほめ讃え、死んだ人間を食うことについては憎む。主客転倒だ。いまは平時でない。ここは戦場だ。そして、いま、なにも食うものがないのだ。ここでは生きることがよいことだ。生きることがすべてだ。ここでは虚飾的な法律、倫理、階級、芸術、宗教、軍人精神、世俗慣習などまったく不用だ。うすっぺらなそれらの、とうてい手のとどかない人間性の根元の問題だ。生きることのなかに何もかもふくまれているのだ——。
人を食うのが罪なら、食べ残すのはもっと重い罪かもしれん。

靖国神社だけでなくて、ルソン島にも、お参りに行きたい。行くべきなんよな。

コメント (4)

dan:

ごくごく偶然 太平洋戦争でベトナム(だったかな・・)を 生き延びたというか逃げ続けたというか生き続けたというか
そういう方の戦争手記を読んでました。
そちらは何人も何十人も生き残り 人肉を食べる事はなく ただ亡くなった方の所持品(飯盒だとか武器だとか靴だとか)をもらう事すら「人非人」となじられる環境で
筆者は様々なものを亡くなった方から頂いていて
体重は60キロ台から30キロ台になったそうで

何が言いたいのか自分でもよく分かりませんが。

谷岡:

人肉を食べる食べんというのは個人差があったかも、と思ったけど、

> 亡くなった方の所持品(飯盒だとか武器だとか靴だとか)をもらう事すら
> 「人非人」となじられる環境

これには驚いたわ……。敵にせよ味方にせよ、
死んだ兵の所持品をもらっていくのは当たり前やと思ってた。

その本、読んでみたいですわ。
この欄でもメールでもええので、教えて〜。

dan:

あーうー書籍じゃないのです

なんか 戦争体験を話そう みたいな感じで ネットでてけとーに調べてって読みあさった日がありまして。。
戦争 体験 手記 とか そんなキーワードだとは思うけど・・沖縄戦の一斉自決みたいのも同じ日に読んだし
なんかネットで捜すと めっちゃめちゃあります。。
ので どれだったのか・・

ああもうほんと すみません・・(;;)

谷岡さんの本も 又機会があってこちらが元気な時に読んでみたいです~~~^^

谷岡:

いやいや、謝らんでも〜。
ネット上のどこかってのは、
そりゃ確かにちょっと探しにくいよね。

フィリピン敗走記、おすすめよ。是非。

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2008年7月13日(日)22:09に書かれたエントリーです。

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